最高裁判所第一小法廷 昭和39年(オ)751号 判決 1967年6月29日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人徳田敬二郎、同秋山彰三の上告理由第一、第二点について。
本件記録を検討すると、上告人は、原審において、第一審における主張をあらため、仙台市南光院丁五番の二宅地三四七坪九勺についての第一審判決添付別紙目録記載の土地に対する昭和二六年一一月二四日付換地予定地の指定は、昭和三五年一〇月一四日取消され、昭和三六年一月一〇日右従前の宅地につき改めて被上告人に対し原判決別紙目録記載の土地が仮換地として指定されたから、右仮換地の指定によりあらためて上告人は右仮換地につき地上権を有するに至つたのでその地上権の確認を求めるものである旨主張し、右仮換地上の地上権の確認を請求するものであることが認められる。
これに対し、原判決(その引用する一審判決をふくむ。以下同じ。)は、原判決別紙目録(二)、(三)記載の仮換地に対する上告人の所論請求について、右請求は乙第一号証の一の判決の既判力に抵触するものではないが、上告人は右確定判決によつて右土地に立入りを禁止されているのであるから訴の利益を有しない旨判断するものである。しかし、乙第一号証の一の確定判決によつて上告人が第一審判決添付別紙目録記載の換地予定地への立入りを禁止されているからといつて、上告人が右確定判決の既判力の標準時以後に生じたという前記仮換地上の地上権を主張し、その確認を請求する場合、これをもつて確認の利益を欠くものとするのは理由のないことであり、この点の原判決の判断説示は肯認することができない。
そこで所論摘示の原判決の判断は、訴の利益についての法律の解釈適用をあやまつた違法が存するものといわなければならない。しかし、原判決は、訴の利益について所論のとおり判断したほか、さらに、本案たる上告人の所論請求についても判断を加えてその理由のない旨を判示し、上告人の所論請求を棄却しているものと解することができ、本案についての原判決の右判断の肯認できることは後記上告理由第三点についての判断において示すとおりであるから、ひつきよう、原判決の右違法は、判決の結論に影響がないものというべきであつて、結局、論旨は採るを得ない。
同第三点について。
従前の宅地の所有者から、仮換地自体について、その本換地として確定する以前にこれを使用収益しうべき旨の地上権の設定を受けることはできない旨の原判決の判断は、正当として肯認することができる。従前の宅地の所有者は仮換地について所論のごとき地上権設定の処分権を有するものではない。
原判決に所論の違法はない。また、所論の違法を前提とする所論違憲の主張も理由がない。論旨は採るを得ない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎)